[雑記?]追憶の、スズキのパテ

正式な名前は忘れた。スズキだったのかも、怪しい。とにかく、白身の魚をふわっとペーストにしてフランスパンに乗っけた、うまい料理だった。

だった、というのは、それを出していた店の主が、先の大地震で故郷に戻り、いまはどこで食べられるのかわからないから。

そこはいつも新鮮な魚と手のこんだ品をおく店で、ここなら何を頼んでもハズれない、という安心感があった。店主はかつてフランス料理店で研鑽をつんだ、腕のよい料理人だったが、とても『シェフ』という雰囲気ではなく、真面目な中にどこかファンキーな感じを漂わせたひとだった。

スズキのパテは、『お通し』だった。
初めてそこに夜行った時、店の人から「食事?」と訊かれて、よくわかっていないわたしはよくわからないままに「はあ」と答えた。(夜の営業は飲みがメインなためお通し500円が付くのだが、ご飯や麺類だけでサッと帰る人もいるので、座った時にどちらかを確認されるのだ)どうやらそれで了解してくれたらしい。
フランスパンを袋から取り出して、切る。それをトースターで焼く。 わたしはそれを見ながら(カウンターキッチンと言うのも憚られる至近距離)冷えた日本酒に口をつけた。
待つ間にも、お客さんは次々に入って来る。わたしの前の先客もいる。みな店の馴染みのようだ。
「どうぞ。」
なんでもない皿に、なんでもない感じで置かれた2切れのパン。上に白っぽいペースト状のものが乗っている。
親指と中指でしっかりとつまんで、口に運ぶ。ざくん。
おいしい。とってもおいしい。
新鮮な魚のうまみと、爽やかな酸味(思い返せばサワークリームかもしれない)、甘みと深みを与えているのは玉ねぎだろうか。ところどころにエシャロットのアクセント(のようなもの)も感じられる。
なんのお酒にも合うだろうすばらしいバランスに、気持ちいい塩加減に、わたしはじぶんの店選びの成功を確信した。

それからというもの、ヒマさえあればその店に通った。時間とお金さえあれば、昼夜分けて行くこともあった。
真摯に楽しげに仕事と向き合う、その店主の姿は、わたしにとっての憧れでもありオアシスでもあった。
週に一度の休み、昼ご飯をここでたらふく食べて、そのあと近くのフレンチでデザートを楽しむその時間が、わたしの命の洗濯になってくれていた。
だから、ここが店を閉めると聞いたときの衝撃はかなりのものだった。


とにかく、今日も汗にじませながら仕事をやっていたんだけど、ふとした瞬間にそのスズキのパテが思い浮かんできてしまって、やたらと懐かしい気分になった。あの店に初めて行ったのもこれくらい暑い季節の、けど風がきもちいい夜だったんじゃないかという気がした。
最近うちの近くに、安くて美味しいバゲットをだすパン屋ができたから(例の店でつかってるパンは、バゲットでもバタールでもなく『フランスパン』だった。その点はいただけないと当時から思っていたのだ)もしできることならばそのバゲットに今、あの『パテ』を乗っけて食べたい、と切に思う。
以下、その味に近づく為の試行錯誤をその都度のせる↓


(覚え書き 2013.7.18 サンマ2尾 玉ねぎ大1(みじん切り)オリーブオイル、塩、胡椒 玉ねぎを飴色まで弱火で炒める、サンマに塩をして、フライパンで加熱、両方を合わせて、あら熱をとり、すり鉢でする。(フープロなし)
作り立て:玉ねぎの甘さが前面にでてくる。塩味は後に残る程度に調整してみる。魚の繊維を感じる
翌日;バゲットに乗せて供する。味が単調&塩気がきつく感じたので、トマトのマリネと、玉ねぎの薄切りをのせてみた。できあがったものにサワークリームをくわえるとまろやかになる。)

(追記 7,19 『パテ』と『テリーヌ』、『リエット』の違いについて。 
手持ちの『改訂調理用語辞典(平成10年)』によれば、パテpâté 、テリーヌterrine、リエットrillettes、はいずれもフランスの伝統的な料理であり、(脂を用いて調理され、パン等と共に供されるという意味で)しばしば混同される。というか、わたしは混同していた。だって、もし例えばビストロのメニューに「あぐー豚のパテ」「あぐー豚のテリーヌ」「あぐー豚のリエット」が載っていたら(そんなビストロはありえないにしても)どうする?なにをもってパテとテリーヌを分けるのかふと分からなくなって、ついつい店員さんを質問攻めにしちゃいそう。(たぶんスゴい嫌がられると思う。
端的に言って、パテは「などの具材を細かく刻み、ペースト状あるいはムース状に練り上げた料理」で、本来は伝統的フランス料理のベーシックとでもいうべきもの。
テリーヌは「パテと同じような材料を使い、特にテリーヌ型に入れて作ったもの」で、原義としては「その型自体を表す」。
うーん、パテはテリーヌを内包するが、テリーヌ(型)を用いないパテをテリーヌとは呼べない、とも言える。のかな。
リエットに関しては、もうめんどくさくなってきたんでwikiを見てもらえればいいとおもうんだけど、()保存食的意味合いが大きく、作り方で言えばコンフィのイメージ。

調べたら結論として、「パンにのせて出しちゃったら、なんて名称でもオッケー」てな風潮も「じつは別に間違ってないじゃん。」ということがわかった。こわいね無知(自分です。)とはいえ元々の定義などを追ってみると、自分の認識とかなり食い違っていて面白かった。
ex)「パテ」はいま流行の「パテドカンパーニュ」のイメージが強くて、テラコッタの型でオーブン焼きした肉料理を「THE パテ!!」というふうに捉えていた。しかし、原義としてのパテはパートpâte 、つまり『生地』(伊:pasta)をであり、伝統的な『パテ』の意味するところは「生地(pâté )具材を包み、オーブンで焼いた料理」だった。(フランス菓子職人pâtissierは『生地を扱う人」を意味する) 時間と場所が変わって行くうちに、本来の意味(覆うパイ生地)が消え、本来の言葉に含まれない中身部分だけで独立して存在ようになった、というのもおもしろい。(また、ハンバーガーのパン部に挟まれた、肉部がパティpattyと呼ばれるのも、同じことだという。)




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