[書評] 妻がガンなのに、僕は恋人のベッドにいる。(主に備忘録)

図書館で見つけた本。 タイトルが2chスレッドくさいけどオランダのベストセラー。面白かった。

とりあえずタイトルを読むだけで大体の内容がつかめるというのがいいね。「うん多分、妻ががんでいるにも関わらず浮気をしているダメ男の話だろうな」と思って読んだけど、本当にそのまんまだった。
ただ、すごかったのはその「浮気」というのがある種の「必要悪」として描かれているところで、それがこの本が心を揺さぶる理由だったと思う。

病気は苦しいものだって、誰もが知っている。病気になった本人はもちろんだけど、同時に周りの人たちも苦しみにのみ込まれ、ただただ「運命」を呪う。それが苦しいであろうことはわかってるんだけど、わたしはあんまり闘病モノって好きじゃなかった。「誰かの不幸」をネタにして涙を流すのが(それをストレス解消の手段にするのが)悪趣味に思えるし、泣くだけ泣いて忘れてしまう自分も薄っぺらく感じられるしで、とにかくイヤになっちゃうんだよね。
ただこの本はちょっと違った。この本にはフォトショップで加工されたような「病に侵された妻」と「それを支える夫」なんて出てこない。「普通の妻」と「普通の夫」が「普通に」暮らしていく、そのさまが書かれているんだ。

わたしたちがおもう「あるべき病人」は、ぐっと唇を噛み締めて、ひとりですすり泣く。
しかし彼女、カルメンはジョークを飛ばしたり、恋人に当たり散らしたりする。
わたしたちがおもう「介護者(支える夫)」は朗らかに、そして根気強く妻を支える。
しかし主人公、スタインは手当たり次第にナンパして、遊びまくって、飲酒運転で車をぶっ壊しさえする。

(妻カルメンはともかくとして)夫のスタインは本当マジで、ろくでもない。自称するところの「貞潔恐怖症」で、仕事はできるが頭のなかは常にアヤックス(オランダのサッカークラブ)とオンナノコのこと。
妻の病気以前もコンスタントに浮気活動はしていたものの、発覚以後はそれがより一層顕著になり、コントロール出来ないレベルになってしまう。
そのあたりの、(とくに中盤、ローズという愛人との)直接的な表現の数々には「おいおいオマエちょっとちょっとちょっと」と突っ込みたくなったし、呆れて本を投げ出しそうになった部分もあった。しかし途中からこれは「必要悪」なんじゃないかと、そう思えてきた。

結果から見ると、彼にとっての浮気はある種の逃避衝動であると同時に、一番の優先事項からズレないためのバランス材だ。ここでいう優先事項とは「妻に優しく接すること。現実から逃げ出さないこと。」であり、主人公は「現実を投げ出す以外の全てのこと」をやって、ついには最期まで妻と共に過ごす。
これ、すごいなって思う。
たしかにその方法はベストとはいえないだろうけど、少なくとも「最悪」だけは回避してる。
そりゃ出来るなら、浮気もきっぱり辞めて、なおかつ献身的な介護をするのがいいに決まってるけど、そんなの(少なくともわたし自身に置き換えてみたら)「出来るわけないじゃん」って感じだし、ほめられないことしながらも「介護を完遂し」「自分の健康と安定を保持しつつ」「妻の死後にも娘と幸せに」なれるように努力した主人公をだれが非難できる?わたしは尊敬する。





※「妻がガンなのに、僕は恋人のベッドにいる」/クルーン著
※(純愛物語を期待する乙女がこの本を手に取るとは思えないけど)万が一なにかの間違いで清純な乙女がこの本を読んでしまった場合、「男性」への著しい嫌悪を催されることが予想されます。十分ご注意下さい。 
※主人公と妻は若くしてそれぞれ会社の経営者、なおかつ双方ルックスもいけてる上に3歳の可愛い娘がいて、と完全な「勝ち組」。そのためがん治療による経済的圧迫だとか、オランダの医療保険の仕組みなどは一切出てきません。ハイソさが少々鼻につく部分もありますが、それを差し引いてもいい小説だと思います。
※男性がこれを読んでどんな感想を抱くのか興味があります。ご一報ください。
※ちなみに主人公の浮気相手ローズ(およびその関係性)のイメージソングはjason mras/butterfly





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